タイ第二の都市チェンマイから北へ5㎞離れたタイ北部の村ファハム。2004年この村にアルツハイマー病や認知症患者を受け入れる介護ホーム「バーン・カムランチャイ」が設立されました。バーン・カムランチャイとはタイ語で「心に寄り添う」という意味で、アルツハイマー病や認知症患者の主にはドイツ語圏のヨーロッパの患者を受け入れている介護ホームです。その斬新なモデルによってドイツとスイスの報道やテレビで取り上げられてきました。
現在はこの介護ホームを設立したマルティン・ヴォートリさんとヴォートリさんのタイ人の奥さんアリーワン・ウッドトリさんによって運営されており、家族介護、認知症の患者14人は「ファハムビレッジ」の様々な9つの民家に住んでおり、他にはスイミンングプールパーク、村の中心部にあるコープミニマーケットで構成されています。異国の地タイで介護ホームを設立しようとしたきっかけはアルツハイマー病を患った妻の介護に疲れたヴォートリさんの父親が自ら命を絶つという出来事があったことで母親のマルグリットさんの介護を一手に引き受けなければならなかったことがあります。
当初はスイスで介護施設を探していたものの、設備や費用の問題で納得できるところが見つからず、以前国境なき医師団の一員として働いていたタイへマルグリットさんを連れ、アルツハイマー病と戦う母親が快適な生活を送ることができるように介護ホームを設立しました。
バーン・カムランチャイでは各患者は8時間シフトで働くケアギバーによって24時間体制でケアされています。具体的には一人の認知症患者に交代制で3人が付き、スタッフの内必ず一人が患者のベッドの隣に横たわり、待機します。こうすることによって仮に睡眠障害が起きてもすぐ対応することができます。また毎日の行動計画は個々の患者に合わせて調整され、ボールを使ったアクティビティや絵画、音楽、ダンスなどをなるべく取り入れるようにしています。
またバーン・カムランチャイの生活形態は個人の家に宿泊することになっているため、普通の生活と変わりません。必要であれば生活必需品などもコープミニマーケットへ買いにいきます。このような形態をとっているのは患者の自主性をとても大事にしているからです。
栄養面に関しても食事は患者の年齢に適した口に合う料理を提供するよう心掛けるほか、医療体制に関しても施設自体に医療スタッフはいないものの、チェンマイの私立病院と密接に連携し、スタッフも緊急事態管理と予防の訓練を定期的に行うなど徹底した対策をしています。そして親族へのアドバイスやサポートが手厚く、費用もスイスなどの介護施設などの通常料金の半分以下で入居できることもあり、非常に注目され、強いつながりを持つ大家族に発展し、村の生活に欠かせないものとなっています。
必ずしも肯定的な意見ばかりではないもののこれらの取り組みは非常に画期的であり、今後認知症患者が増える中で「自分の終の住処」を決めるうえで大きなオプションの一つになることは間違いないでしょう。
引用
・ヨーロッパの認知症患者 タイの太陽のもとで介護生活 - SWI swissinfo.ch