ケアファームがあるのはオランダだけではありません。オランダでケアファームが増えていったのと同時に、ノルウェーやイタリアでもケアファームが増えていきました。
その他、ベルギー、ドイツ、イギリス、アイルランド、フランス、オーストリアなどヨーロッパ各地にケアファームがあります。ケアファーム数の増加は全ての国で同じではありません。ポルトガルやアイルランドのような国ではケアファームはまだ始まったばかりですが、ノルウェーやイタリアではケアファームの数はオランダに匹敵します。
イタリアでは、1980年代に精神科施設が閉鎖された後、社会的共同組合がしばしば出現しました。これらの社会的共同組合の多くは農業を行っており、またヘルスケアの分野も大きな役割を果たしました。ソーシャルファーミングの取り組みに共通しているのは、弱い人々との関わり、人々を助けたいという意思、そして1960年代から70年代にかけての医療改革が原点にあるということです。取り組みの出発点は同じですが、それぞれが異なる発展を遂げており、ヨーロッパのソーシャルファーミング部門は非常に多様性に富んでいることがわかります。
1970年代に入ると、農家と介護施設が連携した丁寧な取り組みが行われるようになり、保育園の「下請け」として農家が呼ばれるなどしていました。1996年に個人予算(PGB)が登場したことで、オランダの農業・介護の発展は勢いを増しました。PGBでは参加者自身がケアファーマーからケアを購入する機会が与えられました。
オランダ政府は農業の広域化を促進し、2000年頃には農業と介護のためのナショナル・サポート・センターが設立され、ケアファームの開発が促進されました。
こうしてケアファームは患者の増加に伴い、10年後には5倍、そのまた10年後には20倍近くになり、1998年には75社しかなかったものが2000年代には認可・非認可含めて1400社以上になったとされ、農業が持つ「人を癒す」という価値の見直しはどんどん行われています。その背景には収入の良さがあります。ケアファームを営む農家の主な収入源は農産物の売り上げのほかに国の介護保険「AWBZ」からの介護報酬、各種寄付の3つです。
AWBZは自治体が保険者となり、基本的にすべての人が加入しています。日本では考えられないことですが、オランダでは家族や友人、地域の人が介護を行った場合でも給付が受けられるようになっているのです。その為ケアファームを経営する団体は利益追求に終始せず、社会性のある事業を行っていると国から認められれば、農業経営による収入に加え、国からの助成金などが受けられるのです。このような手厚い保証制度こそがオランダでケアファームが広がっていった大きな要因とも考えられるのではないでしょうか。
そんなケアファームですが、具体的に各国どのような取り組みを行っているのでしょうか。次回からは各国の取り組みを紹介していきます。
引用
・オランダケア農業連盟ハンドブック
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