フィンランドではケアファームは長い歴史を持ち、さまざまな変遷を経て発展してきました。フィンランドでは1960年~1970年にケアファームの先駆けとなる動きが始まり、農業活動や自然療法が精神的な回復を促進する可能性が注目され始めました。
1980年代になるとフィンランドで最初のケアファームが誕生しました。これらの施設では高齢者や心身に支援が必要な人々に対して、農業活動や自然療法を通じて、リハビリや回復を促す取り組みが行われました。その後1990年代にはフィンランド全土にケアファームは広がり始め、地方自治体や非営利団体が積極的にケアファームを設立し、これらのサービスを提供しました。この時期には農業とケアサービスを統合することで、多くの人々が心身の健康向上や、社会的な参加を実現することができました。
その後2000年代にはフィンランド政府がケアファームの重要性を認識し、その支援をする取り組みが始まりました。農業やケアサービスに関連するトレーニングや資金提供、規制緩和などが行われ、ケアファームの数が増加しました。また、この時期にはケアファームの多様化が進み、動物との交流や、園芸療法など様々な活動やプログラムが提供されるようになりました。具体的な取り組みを紹介すると、まずあげられるのが自然環境を利用したリラクゼーションや自然療法があります。フィンランドでは自然療法を重視しており、患者や高齢者は広大な自然の中で散歩したり、庭仕事や農作業に参加したりすることができます。これら自然の中での活動は、ストレス軽減やリフレッシュに効果的とされています。
次に動物療法です。フィンランドのケアファームでは、動物との触れ合いを通じた療法が行なわれています。特に犬や馬との触れ合いが一般的で、馬に乗ることで、バランスや筋力を鍛える馬療法「エクワインセラピー」や、動物との触れ合いによって心理的な安定を促す動物介在療法が行なわれています。また、地域のコミュニティとの連携を重視しており、地域住民がケアファームを訪れて参加したり、ケアファームが地域のイベントやマーケットに参加したりすることで、連携強化に取り組んでいます。
フィンランドのケアファームでは、支援対象も実に様々であり、高齢者や身体的な障害を持つ人々だけではなく、精神的な問題を抱える人々や子供たちも支援をしています。その他病気、怪我の回復やリハビリに取り組んでいる人々も受け入れており、個々のニーズや状況に応じて、個別にカスタマイズされたサービスを提供しています。これらはフィンランド福祉制度の一環として位置付けられており、「福祉国家フィンランド」と言われるだけあり、福祉サービスがとても充実していることがわかります。