みなさんはオランダには学生なら無料で住むことができる老人ホームがあることを知っていますか?
この制度は介護スタッフ不足を解消するために始められた制度でオランダではどこの施設でも人手不足で介護職に就きたがる若者も少ないのが実情です。その一方オランダの学生向け住宅事情は劣悪でかつ家賃も平均300~600ユーロ(約3万6900円~7万3800円)と欧州内では英国に次いで2番目に高額とされ、さらに生活費も高いため学生の約40%は実家に住んでいるのが実情です。このような背景からオランダの老人ホームでは学生の呼び込みが始まりました。しかしながら当然誰でも入居できるわけではありません。
2012年にケアファームとしては始めて学生の受け入れをしたテーベンダーに位置する特養老人ホーム「フマニタス」のケアハウスには現在160人の高齢者と6人の学生が共同生活をしており、フマニタスは月に約30時間学生たちに働いてもらうことを条件に平均的な学生寮と比較するととても大きい部屋を提供しています。具体的には学生たちは高齢者たちとおしゃべりやゲームをしたりする他落書きアート作品の作成、食事の準備、買い物のサポート、パソコンやタブレットの使い方を教えたりしています。プロジェクト発足時からこのプロジェクトに参加し学生第一号ととして参加している学生によるとプロジェクトは最初から順調だったわけではなく、当初は学生、高齢者共にお互いへの偏見があったようで、1人1人と知り合い、打ち解けるのには時間はかかったものの少しずつ乗り越えていったそうです。
実際このプロジェクトが発足後ケアハウス内で行われたアンケート調査の結果によると住み心地が良くなったと回答している入居者が多数だそうです。フマニタスが始めたこの取り組みはヨーロッパ中の多くの社会組織にインスピレーションを与え、多くの場所で同様の取り組みが始められています。フランスでは高齢者と血縁のない学生の世代間同居が始まっていてフランスでは日本同様に独居老人が増加していることから、孤独死の問題を解消すべく独居老人の自宅に若者を住ませてルームシェアするという試みがされています。一人暮らしが寂しいお年寄りと家賃や自炊の手間等で悩みの多い学生が同居することでお年寄りは寂しさが無くなり、学生は手伝いをすることにより誰かの役にたつ充実感を得ることができ、部屋を無料で使うことができます。
オランダ、フランスと比較すると多少形態はことなりますが根本的な考え方は高齢者、学生双方がウィンウィンな関係を構築できるという意味で同じです。
日本でもこのような世代間同居は広まりつつあり、明治・大正期にあった書生スタイルが復活しつつあるそうです。このことはケアファームを運営していくうえで大きなヒントになることは間違いなく、今後の動向を注視しながら探っていきたいと思います。
引用
・高齢者専用住宅はもう古い?これからは異世代ホームシェア | 老人ホーム・介護施設探しならウチシルベ (osumai-soudan.jp)
・家賃無料! 老人ホームで暮らす学生たち オランダ – NEWS SALT(ニュースソルト)
・Student op kamers tussen de ouderen (humanitasdeventer.nl)
・Humanitas: Gratis studentenwoning in ruil voor vrijwilligerswerk | Body Worlds Amsterdam