オムソーリはスウェーデン語で悲しみや幸せを分かち合うという意味です。
認知症介護の先進国であるスウェーデンでは「オムソーリ」の概念が非常に大切にされており、人々は悲しみを分かち合うことで幸せになれると考えられています。
利用者に対するケア、生活補助をただ単に行うのではなく、人と人の心のこもったコミュニケーションを行うことを看護・介護の場で大切にする。それこそがスウェーデンの「オムソーリ」の概念なのです。そのスウェーデンでは認知症の高齢者の内約45%の人々が一人暮らしを継続しています。そのカギはアンダーナースと呼ばれる介護スタッフの存在だと言われています。アンダーナースとは基礎的な医療の知識を学んだ医療スタッフです。
スウェーデンでは1972年に世界でいち早く高齢社会を迎え、高齢者ケアの軸足を医療中心から福祉中心に転換しました。認知症にかかる国の経費は85%を福祉ケアが占め、医療はわずか5%にとどまっています。病院の数も極限まで減らし、これを機に認知症ケアの中心的な役割も、医師からアンダーナースを始めとする福祉ケアの人々に切り替わり、高齢者の見守りと自立支援を徹底的に行う流れになります。現時点でも病院の数は日本と比べてはるかに少ないようです。それではアンダーナースの人々は具体的にどのような作業をするのでしょうか。エスロブ市でアンダーナースとして働いている職員の一軒一人当たりの時間はわずか15分で、その15分の間にゴミ出し、トイレの便器掃除、寝室のベッドメイキング、投薬介助、患者がオープンサンドを作るのを見守ったりします。これらの間にアンダーナースと利用者は途切れることなく会話を続けており、これだけ短時間で効率よく済むのはアンダーナースの業務から洗濯、掃除を2週間に一度のサービスパトロールチームの仕事として切り離し、調理に関しても真空パックの調理色を導入したことがあげられます。
前述の様にオムソーリとは幸せを分かち合うという意味ですが、利用者の為になんでも尽くすという考え方とは異なるようです。あくまでもそれは高齢者の自立心を育むケアとして考えられており、オムソーリケアを構成する考え方がいくつかあります。
まず初めにポイントを絞ったニーズケアです。その人にとって適切なケアとは何か、よく観察し、ポイントを絞ることが重要になります。次にできることは手伝わず、できないことだけを援助するということです。そこには「お世話」ではなく、「自立支援」を常に念頭に置く考えがあるからです。そしていつでもお互い助け合うことができるように利用者全員の状態をチーム全員で把握することも徹底しています。その他にもフレンドリーに接するが親しき仲にも礼儀ありのスタンスは貫くや、些細なことからも会話を膨らませ、相手からも会話を引き出す、相手の状況を見てその日の優先順位を組み立てる等アンダーナースとしてオムソーリケアを提供するうえで大事な事はたくさんあるようです。また非マニュアルでは例えば「クリスマスまで生きたい」という末期患者がいれば季節外れでもクリスマスの飾りつけをするという場合もあり、「オムソーリ」の概念がいかに大切にされているのかがわかります。2035年、日本では団塊世代が85歳を迎え、85歳を超えると急激に認知症のリスクが高くなると言われています。現在日本では認知症患者は在宅で生活することは難しく、施設や精神科病院に入所、入院するという考え方が一般的であり、その結果不必要な施設入所や精神科病院への入所が増えています。また治療に関しても治療を前提とした医療主体で考えられており、管理的であることを否定できません。
以上のことからもスウェーデンのオムソーリケアが日本における認知症対策においても非常に有益となる可能性も高いことから今後このメソッドが日本にも浸透していき、認知症患者が少しでも住みやすくなるような、そんな日本社会に変わっていくことを変わっていくことを期待したいと思います。
引用
・【講演内容】なぜスウェーデンでは認知症が重症化しないのか。『オムソーリ』のケアにヒントをみる - ZDNET Japan
・社名・事業所名の由来とは | オムソーリ訪問看護リハビリステーション府中 (omsorg.jp)
・ケア原論6 | DOORプロジェクト (geidai.ac.jp)
・https://www.higashi-tokushukai.or.jp/info/details/post_12.html