スロバキアはかつてチェコスロバキア社会主義共和国の一部であり、社会主義時代には国有化された農場が一般的であり、障害者や高齢者、福祉に関しても国有の施設によるサービスが提供されていました。その後1989年のビロード革命を経てスロバキアは市場経済へ移行し、この変化に伴って農村地域での農業が個人や地域のコミュニティによって再び行われるようになりました。そして翌年の1990年からケアファームの数が徐々に増加し、高齢者や障害者を支援するための施設として、農業活動や自然環境の中での活動を展開したことが福祉と農業が結びついたビジネスモデルの礎となりました。
2000年には対象層が高齢者や障害者から精神的な健康を抱える人々にまで拡大しました。さらに活動内容も多様化し、農業活動以外にもアートセラピーや手工芸、スポーツなどが提供されるようになりました。そして2004年にはスロバキアはEUに加盟し、EUの指針と基準に従って介護と福祉サービスが提供されるようになったことに伴って高齢者や障害者の権利が重視されました。
現代のスロバキアでは高齢者と障害者向けの介護施設やケアファームが多数存在し、国や地方自治体、民間の提供者が協力してサービスを提供しています。特に力を入れているのが高齢者や障害者の福祉の向上と個別ニーズに合わせてカスタマイズされたケアと環境を提供する事です。具体的には入居者それぞれに合わせた個別ケアプランを提供し、医療的なケア、身体的なリハビリテーション、心理的な支援といった形でカテゴライズし、社会的な活動やレクリエーションプログラムの提供、最新の医療技術を導入した入居者の健康監視や診療の向上、家庭的な環境を提供するための個室や共同のリビングエリアの提供をしています。他にも前述の様な農業活動、園芸、手工芸、アートセラピー、動物療法、スポーツなどのプログラムの提供、地産の物を生産して地域イベントへ参加、地元の企業や学校などと協力して地域社会への貢献を強化しています。また専門的なケアや心理的なサポートに関してスロバキアの一部ケアファームでは専門家やカウンセラーなどが常駐しており、スロバキア政府はケアファームを福祉政策に統合し、資金提供や法的な枠組みを整備して、ケアファームの持続性や品質の向上を図っています。
このようにスロバキアにおいてケアファームは福祉政策の重要な役割を果たしており、その変遷は社会的ニーズや政策の変化に応じて進化してきました。今後も福祉や健康の分野で継続的な発展を遂げることが期待されています。