みなさんはデンマークが「幸福の国」と言われているのを聞いたことがあるでしょうか?そのように呼ばれる理由に医療費・教育費・出産費が無料など充実した社会福祉サービスが提供されていることが挙げられます。日本では考えられませんがもちろん介護もその中の一つで、充実した介護福祉サービスが受けられるようになっています。
デンマークは消費税が25%、所得税が50%越えということの代わりに、医療費のほとんどが無料であったり、介護福祉サービスが受けられたりといった手厚い社会福祉サービスを提供しています。日本との最大の違いは、社会福祉にかかわる財源を全て税金で賄っていることです。そのため一見して驚くような税率でも国民の満足度は高い状況にあるのです。そして働いて稼いだお金の半分近くが税金に取られることもあり、国民の所得格差も少ないそうです。そんな幸福の国と言われるデンマークの認知症ケアはどのような取り組みが行われているのでしょうか?
デンマークでは1960年代に高齢化率が10%を超えました。その当時日本の特別養護老人ホームに近い介護施設である「プライエム」が多数建設され、大規模化していきました。しかし1980年代に定められた「高齢者三原則」に基づいて、デンマークの介護における大きな改革が起き、介護の場が介護施設から在宅ケアへと方向転換されることになったのです。この「高齢者三原則」とは生活の継続性に関する権利、自己決定の原則、残存能力活用の原則を指し、高齢者が自立した生活を送っていくために非常に重要な指標となっています。
これらのことから現在デンマークではなるべく自宅で介護を受ける、またそれが難しくなった場合でも自分に合った高齢者住宅で最期まで過ごすことができるようなシステムとなっています。在宅介護サービスは市の高齢者福祉サービスが担い、家庭医制度との連携を取りながら24時間の在宅サービスを受けられるようになっています。在宅でのケアを中心とする人が多いため、訪問介護も日本に比べて充実しており、一回の訪問時間は5分から20分と非常に短く設定されているものの、その分訪問回数も多くなっています。
また日本では訪問介護の場合「要介護認定」や「介護の利用制限」がネックになる場合がありますが、デンマークでは要介護認定や利用制限がなく、必要な人が必要な時に無料で使うことができます。介護職員に関しても24時間体制ということで負担が大きく、離職率や人材不足などの問題があるように思えるかもしれませんが、介護職員や医師は公務員のため待遇が安定しており、それらの問題もありません。
デンマークでは年金を受け取る世代のことを「Good years」と呼び、高齢者はまだまだたくさん健康で幸せな年が残っていますよ、という意味ですが実際「Good years」と呼ばれる期間は短く、介護施設の入居審査は市の福祉担当者と看護師のチェックを受けて妥当だと診断された人と判断された人で、入居資格は日本よりも厳しく、入居までの待機期間が1か月~3か月程度で入居後の平均寿命が約1年から1年半という厳しい現実もあります。その背景としては延命治療を美徳とする日本とデンマークは異なり、デンマークでは臨終間際の延命行為に対して医療費はほとんど支払われず、国民から徴収した税金による医療費はその分小児医療などに充てられるからです。そこには人生を長さではなく、質で捉え、人としての機能を終え、死を迎えるのは自然の摂理だと考えるデンマークの理念があります。
このようにデンマークの福祉システムは「ノーマライゼーション」の理念が浸透する北欧において個人の意思を尊重する個人主義と「国民みんなが支えあう」支えあいの制度が確立されているからこそ世界幸福度ランキングでも1位になるなどしていることが分かります。日本では1981年に「国際障害者年」をきっかけに認識され、今までに「ノーマライゼーション」の取り組みがされてきました。現在これらの取り組みは浸透しつつも課題はいくつかあり、よりよい未来を構築するために私たち一人ひとりができることは何か考え、アクションすることが大事だと改めて考えさせられます。
引用
・高齢者を尊重する「幸福の国」デンマークの介護システム|介護職の求人・転職なら介護ぷらす+ (kaigoplus.com)
・デンマークの福祉、介護。高齢化対策モデル国のここがすごい!|介護がもっとたのしくなるサイト【かいごGarden note】