アメリカにケアファームが導入された歴史については18世紀のフィラデルフィアのペンシルベニア病院という施設で患者が農作業や園芸を通じてリハビリ作業を行ったという記録が残っており、ここがスタートだとされています。しかし「ケアファーム」という言葉が一般的に用いられるようになったのは、ごく最近のことだと言われており、1990年代に入ってからだとされています。アメリカでは1990年代に入り、自然療法や緑の療法、そして農業や園芸などの作業療法が注目されるようになり、1990年代に始まったオランダから始まったヨーロッパのケアファーム運動も相まって、設立されました。
当初は身体的、精神的、社会的なニーズを持つ人々に対して、治療的な農場環境を提供することを目的としていました。2000年代に入ると、アメリカのケアファームは、環境保護や自然保護に関心を持つ人々や児童や高齢者などの広範な人々に利用されるようになりました。またケアファームは農業や畜産などの伝統的な農村経済の回復や地域社会の再活性化にも貢献するようになり、2010年代にはさらに健康と福祉の増進に関する重要な役割を果たすことになります。特に精神的な健康に関しては、ケアファームが環境との接触を通じてストレス軽減やリラクゼーションを促進し、心身の健康をサポートすることが目的とされています。
以上が主なアメリカのケアファームにおける変遷ですが、具体的にはどのような取り組みをしているのでしょうか。
まず初めにあげるのが総合医療の取り組みです。総合医療は、西洋医学や代替療法など、異なる医療アプローチを組み合わせることでより効果的な治療を目指すものです。アメリカのケアファームでは、高齢者や慢性疾患患者など総合的な医療とケアを必要とする人々に対して、住宅や医療スタッフ、栄養管理、レクリエーション、社会活動などを提供しています。具体的には定期的な健康チェックや健康管理、治療計画の策定、処方箋の管理、リハビリテーションや栄養管理、社会生活のサポートなど幅広いサービスを提供しています。病院やクリニックとの連携も強化して、必要に応じて入院や手術などの紹介も行っています。
これらの取り組みは高齢化が進むアメリカにおいても、患者の生活の質を向上させることにつながるとされています。また総合的な医療サービスの提供により、患者の健康管理や治療効果の向上、医療費の削減などの効果も期待されています。
次に自然との共生を促すデザインです。アメリカのケアファームでは自然との共生を促すデザインが採用されています。屋外には庭園や野菜畑があり、高齢者や身体障害者、発達障害のある人たちが自然と触れ合いながら、植物の手入れや野菜の収穫などをして活動しています。また栄養士による指導のもと自社で栽培されたそれら野菜や果物など、健康的な食事の提供も行っています。
その他健康プログラムでは運動やレクリエーションなどの健康プログラムが実施されているほか、環境に優しい施設作りの一環として、太陽光パネルを設置したり、節水設備のなど活動しているほか、社会貢献活動の一環として、地域のコミュニティーとの交流やボランティア活動を通じて社会貢献活動を推進しています。このようにアメリカにおけるケアファームは従来の農業や園芸活動を通した自然療法から病院やクリニックとの連携を活かしたサービスまで幅広く事業を展開しています。