日本政府が2015年に策定した認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)の中で認知症カフェの普及が謡われました。
認知症患者とその家族が気軽に立ち寄ってお互い情報交換をしながら交流を深め、認知症に関わるいろいろな情報を得られるのが認知症カフェです。東京都やその他自治体は新オレンジプランの内容を受けて開設費や運営費を助成しました。そして名称も認知症を表に出さないよう配慮して「オレンジカフェ」や「Dカフェ」、「レモンカフェ」などの看板を掲げて運営しています。この認知症カフェですが欧米各国では日本より早期に広がっており、その発祥の地と言われているのがオランダです。1997年にライデン大学の一角にて臨床老年心理学者のベレ・ミーセン氏とオランダアルツハイマー協会が合同で始めたと言われています。ミーセン氏は老人ホームで心理職として働いていました。その仕事は認知症の程度を測る心理検査をすることで心理検査は必要なことであるものの、その過程の中で本人にできないことを自覚させてしまい、混乱しストレスを負わせることにもつながることに気付きます。そしてこの苦しみにより家族と本人の軋轢をもたらしていることにも気が付いたミーセント氏は家族と本人は自らの苦しみを語り対処方法を知り学ぶ場が必要であり、そして取り巻く周囲の人間も理解を示すための場所が必要であると感じます。
そこでできるだけリラックスし、敷居が低く、語れる場としてカフェが最適だと考えました。
カフェと言っても私たちがコーヒーを飲みに行くような営利目的の物ではないため、朝早くから夜遅くまでということはありません。開催頻度も週一回か月一回程で開催時間も一回あたり2時間から5時間までがめどとされています。カフェ開催の頻度は認知症という疾患の特徴を踏まえた上で、参加する人のニーズや参加する意味や効果、開催者側の労力経費等いろいろ検討を重ねて決定します。
カフェの内容は大きく分けて3タイプあり、一つ目はイギリス、オランダが提供するタイプで家庭での認知症高齢者の介護に関するミニレクチャー、コンサートなどの企画、催しを軸にしたサービスです。因みにイギリスではアルツハイマーカフェはメモリーカフェという名で呼ばれてディメンシアカフェとも呼ばれます。二つ目は通常のカフェと同じ仕様で出入り自由、プログラムなどは持たないタイプ、そして三つめはカフェタイム以外に創作などのアクティビティを取り入れているタイプです。主に認知症カフェを設置、運営しているのは市町村、社会福祉法人、社会福祉協議会、認知症の家族を抱える家族を抱える人たちや家族の会、グループホームや小規模で多機能の地域密着型の施設、医療機関、認知症疾患医療センター、介護関連企業等多岐多様にわたります。2021年時点で日本では全国に7,904か所開設されていると言われており、東京、愛知、埼玉、大阪、神奈川と大都市圏に集中しています。そしてこの認知症カフェですが、本人にとっても家族にとっても非常にメリットが多く、前述のように自分の病気についてなかなか自由に話すことができず、ストレスを抱えたり、引きこもっていた人々同士が集まることでストレス発散になり、他の人の経験を聞くことで外出に積極的になったり、また料理をしたり音楽鑑賞、歌を歌ったりと様々なアクティビティがあることで脳が活性化されることや、医療関係者や認知症サポーターの人々、専門家の人々と知り合いになる機会が増えることで、自分一人で悩む必要はないと思えたり、専門的なアドバイスが貰えます。そして時には自分たちがお菓子やコーヒーを提供する側にもなることがある為人の役に立ち、自尊心を高め、喜びを感じることもできます。
以上のことから各国によって呼称は異なるものの、オランダから始まったアルハイマーカフェはヨーロッパを中心に世界に広がり、認知症の人々やその家族にとって大事なコミュニケーションスペースとなっています。このアルハイマーカフェの取り組みに関してコンセプトは多少異なりますが、ケアファームと通ずるところがあり、ケアファームはまだ日本ではそこまで知られてはいませんが、アルツハイマーカフェが急速に発展していったように今後数年でケアファームも発展していくなと改めて感じました。
各国制度によって取り組みは異なるものの、「日本のケアファームはこれだ」と自信を持って世界に紹介できる、そんなケアファームを作ることができるようこれからも日々精進していきたいと思います。
引用
・認知症ケア先進国・オランダの認知症カフェは「普段の生活を続けるための場所」 | ORICON NEWS