ビュートゾルフはオランダ語で地域看護、ご近所ケアといった意味でオランダの地域看護士ヨス・デ・ブロック氏が2006年に創業した非営利の在宅ケア組織です。1チーム4人で始まり急速に成長し、2018年時にはオランダ国内で約950チーム、約1万人の看護師、介護士らが活躍し、質の高いサービスを提供していることで世界的に注目を集めています。
ビュートゾルフの特徴としてあげられるのが地域に密着した小規模運営により、スタッフや利用者と家族の満足度が高いことが特徴です。またICTを活用し、業務効率化やコスト削減、チーム内情報共有などを行い、看護士が専門性の高いチームケアを提供できる体制を構築していることでも知られています。ビュートゾルフは「ティール組織」でこのティール組織とは上下階層を持たない、一人一人が自律的に働くフラットな組織を意味します。
ヨス・デ・ブロック氏がこのような組織運営にこだわるのは自身も看護士として長年在宅医療に携わる中で看護士の働き方を官僚自主的で自主性がないと思っていたからだそうです。
「ティール組織」では個人のセルフマネージマントと、企業人を超えた個人のありのままの性格「ホールネス」が組織を動かす原動力と見なされます。
誰からも命令されるわけでもなく、個人が自律的にそれぞれの個性を自由に発揮してお互いを補い合いながら運営していく形になります。ビュートゾルフのプログラムでは基本的に看護士が患者の必要とするすべてのケアを提供しています。介護士中心のケアモデルを変更することにより、50時間のケア時間の短縮、ケアの質の向上、スタッフの仕事に対する満足度の向上や従来のヘルスケアシステムから約40%の費用削減に成功しています。
では具体的にどのような点が「ティール組織」として成功していると見られているのでしょうか。ビュートゾルフは地域の40~50名の利用者を対象に1チーム12人で編成され、マネージャーはいません。15人の地域コーチが必要に応じてチームをサポートし、バックオフィスには約45人のスタッフがいるのみです。チームメンバーに上下階層はなく、それぞれが自律的にチームを運営、管理しているのです。新しいチームは近隣にオフィスを見つけ地域社会に自己紹介をして信頼を勝ち取りつつ、口コミと紹介を通じて総合診療医やセラピスト、その他の専門家と知り合うことに時間を費やします。メンバーの採用もクライアントや地域の実情に合わせてチームが自主的に行ないます。またビュートゾルフでは「玉ねぎモデル」と呼ばれるケアモデルを採用しており、「この玉ねぎモデル」とは中心にはケア対象者として自律するクライアントが置かれ、その外に家族、友人、隣人という周囲の「インフォーマルネットワーク」、次にビュートゾルフチーム、そして医療専門家の「フォーマルネットワーク」という形で構成されています。
このオランダからスタートしたビュートゾルフは今では世界各国に進出しており、日本では2016年11月に日本法人が設立されるなどその取り組みは世界中から評価されています。
日本が超高齢社会であることは言うまでもないことですが、高齢社会になっているのは諸外国も同じです。記事の中に実際にビュードゾルフで働く現役看護士の言葉で「私たちはより自由になって、より尊重されるようになったおかげで、どうすれば利用者に最高の医療を提供できるか、その正解に近づけたと感じています。多くの官僚主義的な仕事に煩わされることなく、自分たちの好きなこと、つまり利用者に医療を提供することができるようになったのです」とあったのですが、介護する側も介護される側も生きていて楽しく、喜びにあふれる、そんな社会が今後も続くことを切に願います。
引用
・Buurtzorg Services Japan 株式会社の採用・求人情報-engage (en-gage.net)
・オランダ発の在宅ケア組織「ビュートゾルフ」とパートナーシップ締結~専門性の高いケア提供へ向けた看護師採用・育成サポート・ICT基盤を提供~ | 株式会社エス・エム・エス (bm-sms.co.jp)
・管理職が一切存在しないのに急成長 オランダのビュートゾルフはなにが凄い? - マーケティングブログ | パワー・インタラクティブ (powerweb.co.jp)