オーストラリアの名所ゴールドコースト。この近くに「ホープウェルホスピス」はあります。オーストラリアでは1980年頃からホスピス設立の気運が高まってきました。その背景にはキリスト教徒による長い終末期医療の長い歴史があります。ホスピスの大きな役割は病により余命が限られた人が最期を穏やかに過ごすために、延命措置や医療行為を行わず痛みを取り除く治療を施すことです。
ホスピスを運営するイアンさん夫婦がこの施設を設立したのには病院のチャペルで働いていた奥さんがチャペルを訪れる患者さんの「家に帰れない」、「一人で寂しい」という訴えに胸を痛め、そのような人の家族のような場所を作りたいと1994年に立ち上げました。
スタッフは常時看護師と介護士の2名が駐在。治療は必要とされないので看護師はモルヒネや痛み止めなど、物理的な痛みをコントロールする薬剤の投与が主な仕事となります。
庭の手入れや入浴、食事介護など人手が足りない部分はボランティアスタッフが支えます。ボランティアスタッフは入居者と会う前に42時間のグリーフケア研修を受けます。
グリーフケアとは入居者本人やそのパートナーが死に直面した時悲しみを乗り越えられるよう、そばに寄り沿い、支援することです。
オーストラリアでは「自分の人生は最期まで自分で責任をもつ」という認識が発達しています。これはイギリスが植民地化するにあたり、開拓の中で培われた精神と考えられています。また宗教によって組織化された巨大な慈善団体が発展しているものも特徴的で、中でもキリスト教の組織から育ったホスピタリティあふれるホスピスケアは世界中からの視察が絶えないそうです。ホープウェルホスピスでも小規模で行き届いたサービスを継続するために、足りない資金は寄付やチャリティから得ています。
一方日本では緩和ケア病棟が最初に開設されたのは1981年に静岡県の奴隷三方原病院で以来病院を中心に発展してきました。2000年代以降は「緩和ケア病棟入院料」が診療報酬に組みこまれ、現在は全国で約450の緩和家病棟、役9,000勝が提供されています(日本ホスピス緩和ケア協会,2023)。
一方自宅での見取りは13%程度にとどまり、80%以上が病院で最期を迎えているのが現状です(厚生労働省,2021)。その背景には在宅医療提供体制の地域間格差や24時間対応可能な医療チームの不足があります。またそれだけではなく、都市部での核家族化や介護の担い手不足も自宅看取りを困難にしています。そのため、近年新たな選択として「ホスピス型住宅」と呼ばれる介護施設型のホスピスも増加しています。
このホスピス型住宅は医療と介護を一体的に提供する取り組みで、自宅でも病院でもない第三の見取りの場として注目されています。
今後は在宅医療体制の充実や介護サービスとの連携に加え、このような新しい形態のホスピスケアの整備を通じて、患者とその家族が望む場所で最期を迎えられる選択肢を拡げていけるかどうかがとても大事になるでしょう。
引用
・【世界の介護】「最期まで自分らしく」を実現する豪州の緩和ケア (1/1)| 介護ポストセブン
・ホスピスの現状と課題を徹底解説。日本と海外の違いや今後の展望|ホスピス・介護の基礎知識|ホスピス型住宅 ReHOPE(リホープ)