5/10(水)に埼玉県飯能市にあるぬくもり福祉会たんぽぽさんを訪れました。たんぽぽさんでソーシャルファームを担当する奥野洋さん、会長の桑山和子さん、経営管理部長の岡田尚平さんに出迎えられました。
ぬくもり福祉会たんぽぽさん(以下敬称略)は1986年市の公民館で開催された婦人講座からスタートしました。女性問題研究会たんぽぽとして、これからの時代の女性の生き方を考える活動を始め、その後ぬくもりサービスたんぽぽとして家事援助や介護サービスを互助型のサービスとして展開しました。そして1999年に埼玉県で初となるNPO法人の認証を受け、ぬくもり福祉会たんぽぽに改名しました。2000年には介護保険が導入され、介護保険事業所としての活動も始めました。その後デイサービス、訪問介護、訪問介護事業所、グループホーム、ショートステイなどを立ち上げ、現在では飯能市で最も利用者の多い施設となりました。たんぽぽさんは市からの委託を受けて学童保育事業も展開し、地域福祉活動も積極的に行っています。2013年には認定NPO法人となりましたが、法人格取得前の互助型のサービスから介護保険事業所へと進化しても、「助け合い」「支えあい」の精神が根底にあります。
ぬくもり福祉会たんぽぽがソーシャルファームに取り組むきっかけとなったのは、桑山会長が飯能市障害者福祉委員として活動していたときのことです。2007年上野容子さん(当時東京家政大学)との出会いをきっかけにソーシャルファームの存在を知り、さらにソーシャルファームジャパンの炭谷茂理事長とも出会いました。
ぬくもり福祉会たんぽぽは結果的に40~50名の障害を持つ人々を就労に結びつけることに成功しましたが、受け入れ先の不足や職場適応の難しさなど、困難な現実に直面しました。そのような経験から「たんぽぽで就労の場を提供しよう」と決意されたようです。
ぬくもり福祉会たんぽぽが農業を選んだ理由は、地域住民から耕作放棄地を提供してもらえる可能性があったからであり、結果1,7,000平方メートルの広大な敷地を借りることができました。また農業と介護の共通点である【命】に着目し、農業を通じて障害を持つ人々が自信と活力を取り戻せると考えました。
2009年には厚生労働省からの補助金を受け、ソーシャルファーム事業が本格的に始まりました。しかし農地の開墾は予想以上に困難でした。補助金を利用して高齢者を雇い、土壌作りに時間と労力を注ぎ込んだ結果、ようやく「たんぽぽ自然農園」をオープンすることができました。
2013年には「ソーシャルファームフラワーガーデン」もオープンし、職員がビニールハウスでパンジーやビオラ、ポーチュラカなどを栽培しています。当初は農業指導者が1人と障害を持つ人々4名が働いていました。無農薬の自然農法でナス、キュウリ、二十日大根、トマト、ニラ、長ネギ、ほうれん草、サトイモなどを無農薬の自然農法で栽培していた「たんぽぽ自然農園」も時間の経過とともに規模が縮小しました。現在ではブルーベリーとお花の栽培に重点を置いています。私達が訪れた時も、障害を持つ方々が「たんぽぽフラワーガーデン販売所」で作業をしていました。
ぬくもり福祉会たんぽぽでは障害を持つ方々が一般雇用として働いており、その姿勢は創設当初から変わりません。経営は赤字が続いている厳しい状況ですが、桑山会長の言葉からわかるように、畑作業は高齢者にとって喜びの源であり、畑で働くことで高齢者の目が輝いていることを感じました。この話を聞いて、たんぽぽ自然農園がオープンした当初から変わらない信念である「困ったときはお互いさま」のもとで、法人全体がケアファームを支えることで高齢者がよりよい生活を送るために何をすべきか、そして生きがいとは何かを考え、大切にすべきことを再確認しました。