皆さんはノーマライゼーションという言葉を聞いたことはあるでしょうか。ノーマライゼーションの理念が誕生したのは1950年代のデンマーク。当時知的障害者施設の利用者が非人道的な扱いを受けていることを知ったその親たちが「親会」を結成し、状況を改善しようとする運動から始まりました。そして「どんな障害を持っていたとしても健常者と同様な生活と権利が保障されなければならない」という考え方がN・E・バンク-ミケルセンという一人の行政官によって提唱され、1959年にはデンマークの法律として成立します。
そしてその後スウェーデン知的障害児者連盟のベンクト・ニイリエはそのノーマライゼーションの理念を整理し、8つの原理を定義しました。これがアメリカにも広まったことで世界中で有名になったのです。具体的には①一日のノーマルなリズム、②一週間のノーマルなリズム、③一年間のノーマルなリズム、④ライフサイクルでのノーマルな発達的経験、⑤ノーマルな個人の尊厳と自己決定権、⑥その文化におけるノーマルな両性の形態すなわちセクシャリティと結婚の保証、⑦その社会におけるノーマルな経済的水準とそれを得る権利、⑧その地域におけるノーマルな環境水準です。
スウェーデンは1940年代から高齢者福祉に力を入れてきた福祉の歴史があり、一方で日本と同様に80歳以上人口の増加という課題も抱えていました。スウェーデンは解決策として高齢者を病院に入所させるのではなく、在宅介護を推奨することによって予算を抑制する方針を打ち出しました。自宅または自宅のような高齢者住宅、グループホームでの福祉はノーマライゼーションの理念とも合致していました。
認知症介護を行うグループホームであってもそれぞれの個室がしっかりと分けられており、一つ一つが住戸として成立しています。国は法律を整備しましたが、必要なケアサービスを提供するのは各地方自治体。国の高い基準を維持しながら各地域に適応した制度を柔軟に整えることができるのです。
日本のグループホームとの決定的な違いは入居者数の違いで日本は個別に適したケアを提供するために人数を限定していますがスウェーデンでは多くの人数の利用者に対応しており、自治体の制度の下自宅のような機能の個室の中で自己の選択の中で尊厳を持って生活ができるようなサポートをしています。
さらには働く人たちのプロフェッショナルとしての自覚や知識を高く保つことにも注力しており、例えば快適な毎日を過ごすために医師とは別にマッサージ専門のスタッフを置き、精神的にリラックスできるようにするなどスタッフ各々が違う能力を備え、全体としての福祉サービスを完成させられるようにしています。
このような体制を敷くことでスタッフ自身の存在意義も高めることができ、また認知症や障害を抱える高齢者がそれぞれに求めるものが異なり、時や場合によっても要求が異なることも理解して、利用者を肉体的にも精神的にもサポートすることができるのです。
日本でもすでにノーマライゼーション政策に関する取り組みは行われていますが、今後さらに関心を持ってくれる人を増やしていくことが障害を持つ人も持たない人もお互いにとってよりよい社会の構築をするうえで必要不可欠なだけに私たち一人一人ができることが何なのか考え、実行していくことが何よりも大事なことでしょう。
引用
・ノーマライゼーション先進国スウェーデンにおけるグループホームの事例 認知症高齢者とスタッフの関係 - 鞆物語 (tomonoura.life)
・The Hub | Swedish Care International
・ノーマライゼーションとは? 意味と理念を解説&取り組み事例も紹介 | ELEMINIST(エレミニスト)
・ノーマライゼーションの生みの親、”バンク・ミケルセン”|介護職の求人・転職なら介護ぷらす+ (kaigoplus.com)
・ノーマライゼーションとは何か? その意味、理念、歴史を解説します | 次世代型電動車椅子 近距離モビリティ-WHILL公式