6月20日(火)にオランダのバルネフェルトにあるパラダイス・ファームを訪れました。
バルネフェルトはヘルダーラント州に属し、オランダ南東部に位置する都市です。
パラダイス・ケアファームはCoöperatie Boer en Zorgと協力して事業をしており、Coöperatie Boer en Zorg(CBZ)とは小規模介護事業者連合体のことであり、パラダイス・ケアファームのあるヘルダーラント州、ユトレヒト州、オーバイセル州、フレヴォラント州の介護事業団体から構成されています。
介護を受ける人とその家族に自分らしくいられる環境を提供することを使命に様々な取り組みをしているパラダイス・ケアファームですが、具体的にどのような取り組みをしているのでしょうか。パラダイス・ケアファームの利用者は子供から成人、高齢者と非常に幅が広く、子供に関しては自閉症スペクトラムやその他の診断を受けている子供や若者を対象としています。グループケアでは同じような境遇にある同年代の人達と一緒に過ごすことで社会性を養い、自立心の育成を行います。また、グループケアの他にも個別カウンセリングや乗馬学校、学校に通えない子供に関しては、教育的支援として、週末に農場に宿泊して動物や自然と触れ合ってもらうといった取り組みも行っています。
成人に関しては18歳~70歳までの精神的または精神的症状を訴える利用者のためのものであり、長期の病気などによる社会からの離脱後、職場体験の場を探している利用者にも対応しています。利用者は安全で雰囲気のよい農場の中で、自分の強みを生かした仕事をすることができ、人の役に立ち、充実感を得ながら他の人とつながり、自尊心を高めることができます。このような取り組みができる要因として、ケアと農業をしっかりとリンクさせ、参加者とともにその人ができること、好きなことに目を向けることが重要であり、そうすることで誰もが自分らしく、自分のペースで貢献することができるのではないかという、理念があることがあげられます。成人グループで行う作業や活動として、動物(牛、鶏、豚、馬、猫、ウサギ、ヤギ、羊)の世話、庭仕事、ケータリングの手伝い、売店での作業、清掃作業などがあります。ここでは可能な限り参加者のニーズに合わせて作業を決定します。
成人グループのこれらの活動は月曜から金曜日までの10:00~16:00で農場にて行なわれ、何日または半日参加するかは利用者の個人的な学習目標を参考にケアファーム側でプランを作成します。また成人グループにおける個別サポートでは、滞在型コーチング、牧場での個別コーチングの他、馬を使った馬術のコーチング、参加者の自立を促進する、買い物、金銭面、食事、掃除など日常生活に関するサポートを受けることもできます。
最後に高齢者です。高齢者は認知症、身体的、精神的なケアを必要とする高齢者のためのデイケアを提供しています。高齢者デイケアも成人グループ同様月曜日から金曜日までの10:00~16:00で活動をしており、10時にコーヒー、紅茶を飲んでから、動物の世話や餌やり、卵パックへのシール貼り、庭や近くの杜の散策、食事の準備、ゲーム、創作活動など様々な作業があり、好きな作業を選択することができます。お昼には自家農園で取れた野菜を使った食事を食べ、その後アクティヴィテイをしたり、休憩を取り、15時頃コーヒーや紅茶を飲んで、16時には一日が終わります。高齢者の送迎は近所のドライバーがボランティアで行っています。
他には自身らの家畜を使ったオーガニックミートの販売(ブランドロー種の牛、ピエトロン豚)、鶏スープ、オーガニック卵、マーケットガーデンで栽培した野菜や果物(ネギ、キャベツ、ジャガイモ、イチゴ、カシス、ラズベリー、ハーブ)等、蜂蜜、紅茶、オーガニックアイスクリームや編み物など利用者さんが作った工芸品や本、ポストカードなど様々な商品が販売されており、飲み会や料理教室としての会場レンタルやケータリングなどにも取り組むなど、その活動は多岐に渡ります。今回このようなパラダイス・ファームの活動内容を知り、農業先進国オランダにおいても必ずしも補助金をあてにするわけではなく、自分らの強みを活かして事業を行なっていることから、何が自分たちの強みで何ができるか考えることは私たちが今後日本でケアファームを普及していこうとするうえでも極めて大事であることかを改めて考えさせられました。