第二次世界大戦後、フランスでは高齢者の人口が増加し、高齢者に対する適切なケアの需要が高まりました。そしてこれらの要望に応えるために、多くの高齢者向け施設や介護施設が設立されました。その後1960年から1970年代にかけてフランスではケアファームの発展が加速しました。これらの施設は高齢者施設だけではなく、身体障害者向けにも提供されました。そこでは個別の支援が必要な人々に集団生活とプロフェッショナルのサポートを組み合わせたアプローチが採用されました。その後1970年から1980年代にかけてケアファームのコンセプトが形成され、フランス政府はケアファームとその他の介護施設に対する法的規制を整備し、施設の品質と安全性を確保するための法律を導入しました。これにより入居者の権利と福祉が保護されました。その後時間の経過とともにケアファームの種類と提供されるサービスは多様化し、認知症患者向けの特別な施設や自然療法を提供する施設、身体障害者向けの施設、心身の健康のためのプログラムなど様々なケアファームが誕生し、障害者や若者、高齢者、精神障害者、リハビリを必要とする人々など、多様な人々に利用されるようになりました。
今日のフランスにはメゾンデトライト(maison de retraite)という高齢者向けの施設があり、それらの中にはケアファームも含まれます。フランスのケアファームは入居者が自分たちで共同生活を営み、自己決定権を尊重しながらスタッフが必要な支援や介護を提供することが特徴です。またフランスでは介護保険制度が整備されており、入居者が受ける介護サービスの費用の一部が国から支援され、介護保険制度により入居者が自分たちの希望する生活を受けることができるように様々な支援が提供されています。また英語を話せるスタッフが常駐しており、海外からの入居者にも対応できるようになっています。
フランス政府は農業活動の促進や農村地域の発展を図るため介護保険制度の整備をし、ケアファームの創設や運営を支援しています。その為社会福祉、保健省が認定するケアファームは、一定の基準を満たすことが求められています。フランスのケアファームは元々高齢者向け施設から始まり障害者やリハビリを必要とする人々の支援を目的としていましたが、現在では精神的ストレスや生活習慣病など、様々な問題に対しての効果的な治療法として注目されています。また近年では環境保護や持続可能な農業の促進など、社会的、環境的な目的を持ったケアファームも増えています。例えば有機農業を取り入れ、地域の食料自給率の向上を図る取り組みや、農業とアートを結び付けたプログラムがあげられます。
またその他にも地域の人々との交流を大切にしており、例えば地域の学校や福祉施設との協力プログラム、地元の食材の販売促進など地域社会との連携を図っています。
以上のようにフランスのケアファームは入居者の個別のニーズと社会の変化に適応しながら長い間進化し続けています。