1990年代半ば、ベルギーのフランドル地域において、農村地域に住む高齢者の社会的孤立を解消し、農業の継続を支援するための新しい形態の施設が提唱されました。これがベルギーにおける「ケアファーム」の始まりとされています。1990年代後半から2000年代にかけて、ケアファームはベルギー全土に広がり、農業と介護の融合という新しいアプローチが注目を集めました。その後ベルギー政府が「ケアファーム支援法」を制定し、ケアファームの認定制度が導入されました。この制度により、認定を受けたケアファームは、一定の資金援助を受けることができるようになり、さらには介護保険制度の対象となることもありました。
2010年年代に入り、ベルギー政府はケアファームを推進するための新たな政策を策定しました。その一つが「グリーンケア」と呼ばれる取り組みで、これは農業や自然環境を活用したケアサービスを包括的に支援する政策です。またベルギー政府はケアファームの認定制度を改正し、より高い品質基準を設定するとともに、認定プロセスを簡素化するなどの改革を行いました。
現在、ベルギーには700以上のケアファームがあるとされ、老人だけではなく、身体障害を持つ人や精神障害を持つ人など、様々な人が参加しています。またベルギーのケアファームは単に居住施設や日中活動支援施設だけでなく、リハビリテーションセンターや保育所、レストランなどの多様な施設があります。ではどのような取り組みが行われているのでしょうか。
まず初めに紹介するのが農業体験プログラムです。老人達は野菜や果物の収穫、家畜の世話、チーズ作りなど農業に携わることで、自然との接触や運動を通じて健康の維持に努めています。次に外出プログラムです。ベルギーのケアファームでは老人達が外出しやすいように、交通機関の手配や運転手の派遣などのサポートを行っており、老人達は市場や美術館、博物館などへの外出が可能になり、社会との繋がりも維持することができます。
最後に勉強会とレクリエーションです。この勉強会やレクリエーションでは、老人達が興味を持つ分野の勉強会やレクリエーションが定期的に開催されます。例えば、音楽鑑賞会、手芸教室、歴史講座などがあります。これは知的好奇心を刺激することで生活の質の向上を図る狙いがあります。高齢化や障害者支援のニーズが増加する昨今ケアファームは将来的に重要な役割を果たすと注目されており、今後も利用者のニーズにしっかり答えながら、より質の高いサービスを提供していくことが期待されています。