パリから南へ約25キロ。広大な草原に「ルモイ城」があります。ここに城壁が築かれたのは18世紀のことだそうです。このお城は築300年以上の歴史を持つお城であり、またその一部は国の重要文化財に指定されています。そしてこのルモイ城は1983年に「ル・シャトー・ド・ルモイ」として高級有料老人ホームとして生まれ変わりました。
個人主義の国フランスでは長きにわたって自分の理想とする老いの暮らしを求めてきました。そのため早くから他のヨーロッパ諸国に先駆けて様々な民間施設が設立され、高齢者施設に関する権限を国から県に譲渡するというもので自由度が高くなったことでいっそう新しい試みが可能となり、各地で特色ある高齢者施設が誕生していきました。
この高級有料老人ホーム施設の敷地は8haにも及び入居者が思い思いに時間を過ごしています。電動車椅子を使って自由に散策している人がいるかと思えば、自分が得意なことややってみたいことがあれば業務をお願いしたりすることもあるそうです。
古城を利用した施設の部屋はシンプルな作りではあるものの、全部で180室あり、要介護度や症状に合わせて13のセクションに分けられており、セクションの分け方は施設で作成した約20項目の簡易スケールで点数を付けて行われるそうです。またそれぞれのセクションには看護師や介護士、管理栄養士などの専門職のスタッフが10名ずつ配備され、医療ケアまで対応しています。
1か月の利用料は、自立した生活ができる人で約3,000ユーロ(約37万円)、寝たきり状態のような症状が重い人で約3,500ユーロ(約43万2000円)となっており、この中には居室料金の他に介護費や食事代が含まれる。居室の料金は16㎡の個室で94ユーロ(約1万1600円)、29㎡の二人部屋で160ユーロ(約1万9700円)です。家具は持ち込み自由で約半数の人が内装を自分好みにしています。また入居者の高齢化に伴い、認知症の入居者が増えてきたため、他の入居者との生活スペースを区別し、服薬管理を徹底するためハイテクを利用したネットワークシステムを導入しました。このシステムは薬袋のバーコードをかざすとパソコンに入居者の顔写真が表示され、その写真と薬箱に貼られている写真を照らし合わせ、スタッフから本人へ確実に薬を渡すというシステムです。
スタッフが利用者さんが薬を飲んだことを確認し、パソコンに記録を入力するまで画面を閉じることはできず、二重のチェックを設けたため、人為的なミスは起きないと言います。フランスと言えば「ユマニチュード」の国として有名ですが、ル・シャトー・ド・ルモイでもユマニチュードのメソッドを取り入れており、晩年を城で暮らしたい、という壮大な夢を叶えた暮らしは「自分が理想とする老後の暮らし」を考えることはもとより、「どういう人生を過ごしたいか」ということを非常に大事にするフランス人の考え方が大きく影響しているのだと改めて感じます。
一方周知のように日本の介護制度は安心安全は保障されていますが「生きがい」という点においては欠けている点は否定できません。
「どういう人生を過ごしたいか」「自分が理想とする老後の暮らし」を実現できるのがケアファーム。
日本でもフランス同様にたくさんの人々が理想とする「老後の暮らし」や「過ごしたい人生」を提供できるようにこれからも精進していきたいと思います。
引用
. 「お城」もあれば「大工部屋」も 世界の介護施設を知るジャーナリストに聞く…「日本の介護」の未来は? | ページ 2 | ヨミドクター(読売新聞)