皆さんも周知の通り高齢化は日本の問題だけでなく世界の共通問題となっており、それに伴い認知症患者も増加しています。認知症は不治の病であり、世界各国には多くの認知症施設があります。
チューリッヒ州ヴェチコンにある認知症施設ゾンヴァイトは認知症の人が尊重され、尊厳を持って自分の道を歩むことができる環境を提供することを理念に30年以上にわたって認知症患者のケアと介護を専門として運営されてきました。164人の認知症患者が様々な形態で収容でき、入居スペースは認知症の程度によってグループホーム、ハイム、集中介護部門「オアシス」の3か所に分かれており、ハイムとオアシスはゾンヴァイトの敷地内にあり、グループホームは車で5分ほど離れた町の住宅地にあります。グループホームは一つの住居に6人から10人規模で共同生活をする場所で個室があり、台所やリビングなどは共有することになっています。
建築にもこだわっており、ゆったりとくつろげる明るい部屋は開放的で広い庭があり、スペースに飾られたアートは認知症の人々が安らぎを感じられる環境を作り出しています。
またゾンヴァイトは職業訓練や従業員のさらなる教育、訓練に積極的に取り組んでおり、活性化、コミュニケーション、倫理、運動美、基本的な刺激に焦点を当てた広範な社内研修プログラムによってこれを達成しています。従業員は毎年、合計で約400日間の研修を受講しており、社外研修や個人のキャリアプランニングもサポートしているほかチューリッヒ大学の学術教育機関としても認められており、チューリッヒ大学の医学生のトレーニングも行っています。従業員の教育にここまで力を入れている理由としては認知症の人に良いケアを提供するためにはよく訓練された協調性のあるスタッフが重要であると考えているからです。
アクティヴィティに関してはハイキング、グループウォーキング、手工芸、運動や体操、ヨガ、教会での奉仕活動、絵画制作、ダンスや音楽イベント等多岐にわたり、個々の状況等に合わせて参加する活動を決めます。しかしながらこれらの活動に一緒に参加するかただその場で本人の様子を眺めるかは本人次第です。
ここに来る認知症患者は手助けさえあれば料理屋電話など大体のことは自分でできる人たちで、施設スタッフはサポート役として買い物や食事の手伝いをし、住人ができなくなってしまったことをサポートします。基本的には人とのつながりを持つこと、人のそばにいることが大事であると考えています。
世界的に平均寿命が長くなった昨今特に認知症患者の増加が著しいヨーロッパの長寿国スイスでは患者の看護にかかる費用が莫大になったことで早急の対策が求められており、スイスのあるツハイマー病教会(Alzheimervereinigung)は自分でできることは自分でするように認知症患者に奨め、できるだけ自立しているように促すことで看護が必要になる時期を遅らせる等の対応をしています。2050年には1億5000万人を超えると言われている認知症患者。
認知症にならないためのトレーニングや訓練はもちろん大事ですが、万が一認知症になってしまった場合でも認知症患者が尊厳を持って最期まで素敵な人生を送ることができるような社会であり続けることを心から願うと同時に一人でも多くの人が他人事ではなく、認知症に興味を持つこと、知ることがより良い社会を作っていくうえで必要なことだと感じます。
引用
・https://www.sonnweid.ch/
・https://www.swissinfo.ch/jpn/society/%E5%A2%97%E3%81%88%E7%B6%9A%E3%81%91%E3%82%8B%E8%AA%8D%E7%9F%A5%E7%97%87%E6%82%A3%E8%80%85/32142294
・https://www.swissinfo.ch/jpn/%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%95%EF%BC%86%E9%AB%98%E9%BD%A2%E5%8C%96/%E8%AA%8D%E7%9F%A5%E7%97%87%E3%81%A7%E3%82%82-%E8%87%AA%E5%88%86%E3%82%89%E3%81%97%E3%81%8F%E3%81%84%E3%82%89%E3%82%8C%E3%82%8B%E5%A0%B4%E6%89%80/31196702