エイジテックとは「高齢者(Age)」と「テクノロジー(Tech)」を掛け合わせて作られた言葉で高齢者が生活するうえで直面する様々な困りごとを解決、サポートしてくれるテクノロジーのことです。エイジテックと言っても非常に幅が広いため、「誰が使うのか」に着目して分けると以下のようになります。
・高齢者自身が使用するもの
・高齢者向けに医療、介護施設や行政が利用するもの
・高齢者を介護する親族など、個人が利用するもの
・若年層が高齢化に備えて利用するもの
エイジテックの背景には社会の高齢化があります。ものすごいペースで高齢化が進んでいる日本にあっては他の先進諸国に先駆けてエイジテック市場が拡大していくのはたやすく想像できます。内閣府によると2019年における日本の総人口に占める65歳以上の人口の割合は28.4%であり、約三人に一人が高齢者です。そしてこの比率はこれからも上昇し続け、2065年には38.4%までになると言われています。
高齢者(65歳以上)の人口に対する現役世代(15歳~64歳以上)人口の比率については1960年には12.1人の現役世代が高齢者一人を支えていたのが2015年には現役世代2.3人で高齢者一人を支えるまでになっています。そして2065年には1.3人の現役世代で高齢者一人を支えるという推計も出ています。しかしながら厚生労働省による介護人材の需給ギャップは37.7万人にも及ぶと推計されており、介護人材の不足も深刻な社会課題となっています。以上の推計から少子高齢化は今後もより進行していくことがわかり、少子高齢化に比例して医療費が増大していくことも考えられます。そのためそれらの課題を解決するためにもエイジテックは社会的に需要が高いと言えるでしょう。
一方海外に目を向けてみると欧米諸国でも高齢化は日本と同様に軒並み上昇する推計が出ており、高齢者向けの医療費が増大してくことが推察できます。アメリカではすでにエイジテック産業は巨大なものになってきており、エイジテックベンチャーだけではなく、エイジテック専門のベンチャーキャピタルやファンドが次々と創設されているほかフランスにおいても政府がエイジテックベンチャーの創出を促すために「シルバーバレー」という産官学が連携した非営利組織を設立したりするなど力を入れています。
このように世界的に長寿化、少子化が進む中でビジネスチャンスとして注目されているのがエイジテック市場なのです。魅力的なエイジテック市場ですが課題もあります。まずはじめにエイジテックで活用されるAIやIoTなどのテクノロジーは新しい技術委であり、開発や研究に時間とコストがかかっているため、サービスを導入する際のコストも高くなる点です。またサービスを享受する高齢者が使いこなさなければ意味がなく、アプリなどのデジタルサービスを不自由なく使っている若年層と比較して操作等が難しいと考えられる可能性が高いため、簡単に使えるサービスの開発が必要です。
そして最後にサービスを導入する介護施設や介護従事者の理解も必要です。どんなに素晴らしいサービスを開発、提供できたとしても介護施設や施設で働く人々の共感や理解がなければサービス導入には至りません。このことからサービスの提供企業は高齢者と介護者の両方が情報を手に入れられやすいように情報を発信していく必要があります。このように課題もあるエイジテックですが、今後さらに少子高齢化が進む日本にとってますます必要とされていくと考えられることからさらなるサービスの普及と高齢者がより住みやすい社会が構築されることを願います。
引用
・https://www.tsukui-staff.net/kaigo-garden/life/agetech/
・https://www.wellaging-forum.org/about-3
・https://seminars.jp/media/1047
・https://jp.weforum.org/stories/2025/05/how-agetech-can-ease-care-burdens-and-rejuvenate-the-longevity-economy/